『スーパーマリオランド』【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(6)~

2024年7月11日

 『スーパーマリオランド』とは、「看板に捕われない自由な発想で創られたマリオ」である。

 『スーパーマリオランド』は、1989年にゲームボーイと同時に発売されたローンチタイトルのひとつ。ハードは変わったものの、スーパーマリオシリーズの最新作として発表され大ヒットした。
 その魅力は、先に触れた「自由な発想」にある。そのエッセンスについて掘り下げていきたい。

自由すぎるワールド構成

 『スーパーマリオランド』は、各ワールドの個性がすごい。

 ワールド2のミューダ王国には、スタート位置にUFOがある。普通に考えればマリオがそこから出てきたことを推察できる。ということは、マリオはUFOに乗ってここまで来たことになる。「なぜUFO??」「どうやって???」疑問符は無限増殖する1UPのごとく溢れてくるが、その問いに対する回答はどこにもない

 ワールド3のイーストン王国はモアイがいっぱい。グラディウスのオマージュなのかは定かでないが、3面であることを踏まえると全くの偶然とは思えない。とにかく、このワールドにシューティングステージを設けなかったのは英断だった

 ワールド4のチャイ王国は、中華風のBGMに乗せてキョンシーが登場する中華ステージ。キョンシーは一見手強そうだが、スーパーボールで簡単に倒すことができる。そもそも現代っ子にはキョンシーが分からないだろう。レイレイのおかげで平成世代にも多少の知名度はあるものの、ゲーメストを愛読するような一部マニアしか知らないのが現実である
 キョンシーブームは、もう遠い記憶の片隅にある昭和の残滓に過ぎないのだ。

 ※ワールド1は普通なので割愛!

 本作はサラサ・ランドが舞台なので、助けを求めているのはサラサのデイジー姫。ピーチ姫以外のお姫様を助けに行くことになるのはシリーズで初めて。この流れが続き、『男はつらいよ』のようにヒロインが各地に点在する形になるのかと危惧したが、杞憂に過ぎなかった。その後もピーチ姫がヒロインの座に留まることで、"さらわれるお姫様"のイメージが定着したのは皮肉なものである。

自由すぎる遊び心

 『スーパーマリオランド』には、インパクトのある敵やギミックがいくつかある。

 まず、スーパーボールを採用したこと。これがファミコン版との明確な差別化になっている。敵を倒すだけでなく、コインの回収にも使えるのが斬新だった。連射できない不便さは安直に撃てないデメリットになっており、その仕様が絶妙のバランスを生んでいた。

 ギミックには隠し要素のエレベーターがある。見た目にも印象深いギミックなのに、ノーヒントの隠し要素というのがまた面白い。その存在すら気づかないままクリアしたユーザーも多いことだろう。

 シューティングステージを採用したこともかなりの冒険である。
 難易度の低さと操作性の高さが相まってか、本作のシューティングステージは楽しい印象しかない。最終エリアをシューティングステージにしたことも、繰り返しプレイしたくなる大きな要因になっている。
 海ステージではマリン・ポップ号に乗り込む。そんな快適なものがあるなら、その後の作品でも使えよとツッコミを入れたくなる。空ステージでもスカイ・ポップ号に乗り込む。そんな快適なものがあr(ry

 そして、敵ではデイジー姫をさらった正体不明の宇宙怪人タタンガ。公式サイトの解説では、突如宇宙の彼方から現れたらしいのでクッパの比じゃないくらいヤバいのが分かる。宇宙催眠で国民を操るらしく、その時点で勝てる気がしない。そんな化け物を相手にヒゲのおっさんが単身で挑むことがすでに間違っている。
 ところが、実際はおそろしく弱い。敗因はマリオに宇宙催眠を仕掛けなかったこと。以上!

 最後にどうしても語りたい敵がいる。4-3のボス直前の土管から登場する"人間の拳“。初めて見たときは、ポーズで確認して更に驚いた記憶がある。最後の最後に想定外の"拳"を選択したセンスこそが、本作の魅力の根底にある"遊び心"なのだ。

いいところ&気になった点

 いいところは間違いなくBGM。スーパーマリオらしさを残しつつ、『スーパーマリオランド』の色をしっかりと出している。特にベース音が心地良く、少ない音でも印象的な旋律を響かせている。
 スターを取ったときのBGMが『天国と地獄』になっている点もポイントが高い。これは個人的なものなので恐縮だが、私の好きなタイトルである『フラッピー』のボーナスステージと同じというだけの話。

 気になった点は、内容がやや少ないところ。ローンチタイトルにボリュームを求めるのは酷だが、プレイ感覚が良好だったので、もう少し色んなステージを楽しみたかった。

まとめ

 『スーパーマリオランド』は、ゲームボーイという制約の多いハードながらマリオらしさを失わない良作である。プレイ時間も非常に短く、難易度も易しいので老若男女問わず楽しめる。
 スイッチオンラインでの配信もあり、プレイ環境も整った今プレイすべきタイトルのひとつであることは言うまでもない。未プレイの方は、スーパーボールを投げる希少なマリオを是非堪能していただきたい。

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