『ブレスオブファイア 竜の戦士』【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(14)~

『ブレスオブファイア』は、「ツッコミどころ満載のRPG」である。
 王道でありながら独特の空気感を持っている。長きに渡って続いているシリーズの第1作目はどのような内容だったのか、独自の視点で語っていきたい。

個性豊かな仲間たち

 ブレスオブファイアは、仲間が最大8人という大所帯になる。リュウの一人旅から始まったこともあり、終盤の賑やかさは印象がより増している。まずは、リュウと共に旅をする”ゆかいな仲間たち”に触れていく。

ニーナ

 ヒロイン的存在。おてんばな性格の王女さまで、"昭和のヒロイン"を地で行くようなキャラに仕上がっている。開発された時期が平成になったばかりなので無理もないが、古臭さは否めない。

ダンク

 おしゃべりな盗賊。見た目のイメージとは大きく異なり、合体能力で最強のアタッカーとして猛威を振るう。まず「ぷかぎゅる」って何やねん。

マニーロ

 守銭奴の商人。いきなり法外な借金を背負わせてくる危険人物だが、最後までそれを貫いたから筋は通っている。パーティの中で一番やべーやつ。

ギリアム、ビルダー

 口数の少ない大人の男性。二人はかなりキャラ被りしていたので、最初から合体しておいた方が良かったかもしれない。

モグ

 仲間になるイベントに熱が入っていたせいか、主人公のリュウを食ってしまうぐらい主人公感が強い。戦闘での活躍は期待できないが、それ以外では仲間の窮地を救う活躍を見せる。パーティにいる期間は一番短いのに、やけに目立つ恵まれた存在。
 かなり持ち上げてしまったが、子供の頃に『ドリモグだァ!!(モグラが主人公のTVアニメ)』を見ていたことは関係ないと思う。たぶん。

ディース

 性格はかなり粗雑だが、とてつもない力を持っている大魔法使い。胴体はヘビだし、見た目も中身もクセがすごい。寝ている姿がかわいいので、個人的には気に入っている。欲を言えば、もう少し出番(イベント等)を増やしてほしかった。

ユニークなセリフ

 全編を通してセリフは軽い。ガーディアンなど概念のような存在であっても言葉遣いが軽い。カギを護る存在に、「じゃあよろしく」と同級生みたいなノリで来られても困る。おまえ絶対タメじゃねーし。

 本作では、ボスのHPゲージがなくなったあとに一度だけ耐える演出が入る。そのときのメッセージにも個性が光る。「しぶとくおきあがった!」や「きれた!!」なら理解できるが、「ぬかにくぎ」と言われてもプレイヤーはポカンとしてしまう。
 おそらく「その攻撃は効いてないよ」と虚勢を張っているのだろうが、相手に直接伝える場面だと不適当ではないのか。ただ、盛り上がる戦闘終盤にシュールなメッセージが出るのは面白いので、ラスボスにも「ぬかにくぎ」と言ってほしかった。

 あと、断末魔にもこだわりを感じた。製作スタッフのフェチなのか定かではないが、やけに断末魔が多く見受けられた。調子に乗って、「あべし」「ひでぶ」「ちにゃ」とエスカレートしなかったのは評価したい。

気になった点

 気になった点は三つ。

 一つ目は、ゲームバランスの悪さ。
 一部の強行動があまりに強すぎて、それだけで強引に進めてしまう状況がほとんどだった。魔法も種類は豊富だが、多すぎて何が有効なのかわからない。属性の概念も、一部の強行動がすべて台無しにしたのはもったいなかった。

 二つ目は、導線の張り方。物語を進めていく際に、次にどこへ行けばいいのか、何をすればいいのかを示すもので、ブレスオブファイアでは、この処理が雑になっている

 たとえば、『オリザニン』の素材を集めるくだり。素材はキャラ固有のアクション(釣り等)で入手できる。色んなことを試すプレイヤーならすぐ理解できると思うが、ピンとこなければ途方に暮れてしまう。
 そもそも仲間になったときに、釣りや狩りといった固有アクションの説明が一切ないのは問題だ。そのため、一度も固有アクションを使わずにこのイベントにぶち当たることもあり得る。
 せめて、お前たちの得意なアクションで集めろ、といったヒントでも添えて欲しかった。

 つぎに、『はがんのつめ』を入手するくだり。武器集めが趣味である老人同士の間をおつかいしていくイベントだが、そのとっかかりである老婆にたどり着くのが難しい。武器集めが趣味の老人のことを覚えている前提だと思われるが、これもピンとこなければ手当たり次第に捜索しなければならない。

 要するに不親切な作りになっているのだ。「まぁ、そこまで言わなくてもわかるだろう」と高を括っている印象を受けてしまうのは残念。

 三つ目は、ストーリーの薄さ。
 まず、主人公のリュウの存在感が皆無に等しい。あまりにもリュウが話に絡まないため、最終盤に姉が出てくるまでリュウの境遇を忘れていた。
 そして、ドラマの少なさにも言及したい。たしかに四天王カーラのイベントは素晴らしかった。しかし、心に残るドラマはそれしかない。本編のほとんどがおつかいイベントであり、仲間の人間ドラマがほとんど描かれなかったのは寂しい。
 それなのに老人同士の恋愛ごっこを採用したりする。うーむ、わからん。

まとめ

 ブレスオブファイアは、カプコンが本格RPGのオリジナルタイトルとして送り出した意欲作。システムに様々な個性を持たせたものの、戦闘は強行動との格差が大きすぎてバランスは崩壊気味だった。戦闘は一要素であるとはいえ、もう少し調整を施していただきたかった。

 やや苦言が多くなったものの、キャラクターは敵も味方も魅力十分。バラエティに富んだ世界観も楽しいので、一度プレイみていただきたい。
 クリア後、ブレスオブファイアで一番印象的だったものを思い浮かべてみた。

 導き出された答えは、「ぬかにくぎ」だった。

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