『うる星やつら ミス友引を捜せ!』が想像を超えたクオリティだった件【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(19)~

 『うる星やつら ミス友引を捜せ!』は、1992年にゲームボーイで発売されたRPG。当時は『らんま1/2』が連載中であり、『うる星やつら』は少し前の作品という印象があった。とはいえ、TVシリーズの再放送などもあり、作品自体の人気はまだまだ持続していた。そんな時期のお話。

 今回は『うる星やつら ミス友引を捜せ!』をプレイした感想を書いていきたい。正直なところ、あまり期待はしていなかった。しかし、私の想像を超えるものを見せてくれた。その内容について触れてみる。

美麗なドット絵に驚嘆

 私の想像を超えていたもの、それはドット絵である。

 GBは基本的に黒1色しか使えない。濃淡こそ付けられるものの、単色でこのクオリティはすごい。
 キャラクターは、それぞれの個性を感じられるように描かれている。とにかく愛を感じるのだ。
 ドット絵は、シンプルだからこそ描くのが難しい。点ひとつあるだけで、1ドットずれるだけで、印象が大きく変わってしまう繊細なものだ。多くのキャラクターが登場するのにも関わらず、破綻なく仕上がっているなど信じられない。この一点だけを取っても、本作が特筆すべきタイトルであることを示している。

煌びやかな女子

 ラム、しのぶ、さくら、おゆき、ラン、弁天などのメイン級は言わずもがな。さらに、ももえ、くみこといったモブキャラまで総じてクオリティが高い。敵として登場する女子キャラは強めに設定されており、序盤はエンカウントしても逃げることしかできない。中盤以降はじゃれ合えるものの、大抵の場合一撃であっけなくお別れになるのが空しい。

エネルギッシュな野郎キャラ

 強烈な個性を持つ男キャラも完成度が高い。校長、チェリー、ジャリテン、竜之介の親父などが、表情豊かに描かれている。
 印象的だったのは温泉マーク。登場から顔グラフィックまでとにかく躍動感がすごい。お馴染みのパーマやチビ、カクガリも安定の雑魚キャラとしていい味を出している。

簡素すぎる3Dダンジョン

 フレームのみで構成されている3Dダンジョンがまた味わい深い。キャラクターに全振りした結果なのかもしれないが、背景にこだわりすぎて処理が重くなっては本末転倒。マップなど動いているかどうかが目視できていれば良いのである。シンプルイズベスト。

邪魔しないシンプルなBGM

 OPタイトルでは、TVアニメのED「宇宙は大ヘンだ!」が使われている。TVアニメのOPは、ファミコン版のイメージが強いので回避した可能性が高い。あの作品はアーケード版(うる星やつらではなくオリジナルキャラクター)でも同じ曲を使っていた謎の経緯もある。他のゲームで使われていると、色々な問題があるのだろう。

 ダンジョンのBGMは3種類しかなく、4階からは1階と同じになり以降もループしていく。個人的には2階(5階)の曲がお気に入り。

 戦闘は通常、校長、ボス戦、ラスボス戦の4種類。あえてフィールド曲を減らして戦闘曲を増やしたところにもこだわりを感じる。校長に関してはその役割から専用BGMにする意味はあるし、演出としても成功している。

攻略のカギは校長

 ランダムで出現する校長。彼に話しかけることで、次に向かうべき場所を知ることができる。
 逆に校長とエンカウントしなければ、どこへ向かえばいいのか分からない。専用BGMは伊達じゃない。

豪快ながらも絶妙なゲームバランス

 開始直後のあたるはとにかく弱い。食物連鎖でいえば草以下である。ドラクエで例えるならスライム相手にいい勝負をするレベル。しかも、武器を買って装備しないと攻撃がまともに当たらない。「もしかしてク○ゲー?」と一瞬過ったが、それは杞憂に終わる。

 必勝法は"逃げるが勝ち"。なぜか高確率で逃げられる仕様になっており、これが絶妙のバランスを可能にした。つまり、敵を選別できるのだ。敵の攻撃力の差があまりに大きく、戦ってはいけない敵からはさっさと回れ右しなければならない。弱い者いじめと言われようとも、生き抜くためにはやむを得ない。

 中盤以降は逆転して無双状態になる。レベルアップの恩恵が異常に高く、少しステータスが上がるだけで与ダメージ、被ダメージは目に見えて変わる。あれだけ苦戦した敵を一撃で屠れるようになると、自身の成長をしみじみと感じられるのだ。

 ボスはどれも強敵ばかりで、普通に戦うと負ける可能性が高い。そこで活躍するのがいんちきの「とわにねむれ」。この技が決まると、敵は2ターンの間動けなくなる。あとは2回攻撃してから「とわにねむれ」の繰り返し。卑怯と言われても、あたるにはこれしかない。勝てば官軍。
 ちなみに、いんちきとは特技のこと。この名称は最後までピンとこなかった。

アイテムも種類が豊富!

 装備は武器、防具、盾、アイテムと4種類もある。作品のボリュームから考えれば明らかに多すぎる。武器と防具だけでちょうどいいぐらいなのに、防具を複数装備できるところがRPGとしての矜持なのだろう。
 店だけでなく、敵のドロップによる固有装備もある。やはり作品のボリュームから考えr(ry
 細かい話だが、装備できるアイテムが道具屋に置いてあるので気づきにくい。防具屋でよかったのではないか。

 お店も凝っていて、切り替えるたびに受付の女の子が変装する。この演出がよく分からないけれど面白い。中でも道具屋はクオリティ高めでお気に入り。もしかしたら全キャラクターの中で一番好きかもしれない。名前は分からないままだが、そのミステリアスな感じも魅力。

気になった点

 正ヒロインであるラムちゃんの表情が最後まですぐれなかったこと。最後にハッピーエンドらしい一枚絵でもあれば、気持ちよく終われた気がする。
 ムスーっとした顔のまま「ダーリン だーいすき!!!」と言われても違和感しかなかった。便秘だったのだろうか。

まとめ

 最高級のドット絵に大味なバランス。BGMも程よく、マップも見やすい。昔からキャラゲー=ク○ゲーというレッテルを貼られがちだが、その風評を覆すような執念を感じる出来だった。

 面白さとは、ストレスフリーで絶妙なバランスだけではない。プレイして面白いかどうかだ。

 『うる星やつら』のファンではなくても、一度はプレイしてほしい隠れた良作だった。

PR