『ドラゴンクエスト2(ドラクエ2)』【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(13)~

2024年8月24日

 『ドラゴンクエスト2』は、「遥かなる旅路の厳しさを教えてくれる作品」である。
 第1作目からたったの8か月で制作された第2作目は、前作とは比べものにならないボリュームアップが図られている。どこか変わり、進化したのかを、独自の視点で解説していきたい。

パーティプレイの醍醐味

 『ドラゴンクエスト2(以下ドラクエ2)』は、前作の一人旅から三人パーティへと進化した。ただし、敵もパーティを組むようになり、結果的にプレイヤーが割を食う形となった。三人の勇者はそれぞれが違う能力に特化しており、終盤になるほどそれぞれが役割を全うすることで強敵を倒せる調整が施されている。

 ローレシア王子は、いわゆる脳筋。呪文が使えないので、"たたかう一択兄さん“と化す。高火力、高耐久のシンプルな強さが頼もしい。

 サマルトリア王子は、そこそこの攻撃力とサポートを担う万能タイプ。ただし、万能になるのは終盤以降のみ。それまでの主な仕事はリレミトとルーラなので、ほぼ配送業者といっても過言ではない。
 棺に入っているネタ描写も多く見受けられるが、これは普通にプレイするとショボい防具しかなく撃たれ弱いのが原因。ムーンブルク王女はみずのはごろもでカッチカチになるが、サマルトリア王子は店売りのミンクのコートが最強。呪文や炎の軽減がない既製品では少し心許ない。
 そもそも炎を吐く敵が多いのにミンクのコートを着るのは危機管理能力を疑われてしまう。命がけでモクテスマ・ディフェンスの真似をやりたいのなら止めはしないが。

 ムーンブルク王女は、回復と全体攻撃が優秀な魔法使い。狙われるとあっさり死んでしまうため、みずのはごろもを入手するまでは実にか弱い。イオナズンを覚えてからは、それまでと打って変わってドSキャラに転じる。敵の混成パーティが多い本作では、全体へ大ダメージを与えられることのメリットは非常に大きい。
 遊び要素であるパルプンテにいたっては、とてつもなく恐ろしいものを呼び出すことができる。ハーゴンも逃げ出すぐらいだから、あぶないみずぎを着たゾーマだったのかもしれない。

理不尽な難易度だからこその達成感

 『ドラクエ2』は、ドラクエ史上もっとも難しいと言われている。その理由は、ロンダルキアの洞窟以降に集約される。
 ロンダルキアの洞窟は、言わずと知れた最恐のダンジョン。階層は多く、落とし穴も多い。そして、落とし穴に落ちた先のエンカウント率が異常と勇者たちを全力で始末しにかかってくる。

 そんなロンダルキアの洞窟だからこそ、攻略したときの達成感はひとしおである。ところが、そこで終わらないのが『ドラクエ2』の理不尽なところ。真っ白なロンダルキアの大地にあるほこらまでたどり着かなければゴールじゃない。その距離は中途半端に長く、数回のエンカウントを乗り越えなければならない。出現するモンスターはそれまでとはワンランク上の凶悪さ。まともに戦うと満身創痍になる可能性が高い。つまり、その数回の戦闘を逃げ切れるかどうかの運ゲーを乗り越えてはじめてロンダルキアの洞窟制覇となるのだ。

 そのロンダルキアの大地には、ブリザードという最低のモンスターが出てくる。高確率でザラキを使ってくるため、運が悪いと一瞬で全滅してしまう理不尽の権化のようなモンスター。しかも、それが4体パーティで出てくるのだから性質が悪い。
 サマルトリア王子が生きていれば立て直しは効くが、なぜかサマルトリア王子の息の根が止まる率は高い。これは偶然なのだが、同じような印象を持つプレイヤーは多いはずだ。そもそもブリザード4体というパーティを設定したスタッフの性格が悪すぎる。ザラキが成功したブリザードは、返り血を浴びてケタケタと笑っているように見える。その姿はまさに悪魔そのものだ。

前作から繋がるストーリー

 『ドラクエ2』は前作から100年後の世界。つまり、『ドラゴンクエスト』をクリアしていれば主人公が見知らぬ勇者ではなくなり、最初から思い入れを持ってプレイができる。
 アレフガルドが存在し、竜王の子孫を登場させるところは堀井氏のセンスが炸裂する。ロトのつるぎを超える武器を登場させることで、前作を超える印象を受けた。
 船による移動は、世界の広さをまざまざと見せつけてくる。どこへ行けばいいのか分からない自由度の高さが高難易度にもつながっているが、それ以上に自分の手で未開の地を切り開く楽しさは衝撃的な体験だった。
 アレフガルドがあることで、世界の広さをより強く実感できたのは間違いない。フィールドに降りて『荒野を行く』が流れたとき、驚きと同時に故郷へ帰ってきたような安堵感が込み上げてきた。それは、ゲームの新しい魅力を見せつけられた瞬間でもあった。

裏技という名の難易度調整

 内部処理の隙を利用した裏技が多く存在したのも本作の魅力のひとつ。
 いかづちのつえの金策や、みずのはごろもの複数制作など、攻略の手助けになるものが多かったことはプレイヤーにとって有難かった。裏技のおかげで理不尽なところも緩和されて絶妙のバランスになったのも事実である。

気になった点

 やはり難易度の高さにはツッコミを入れたくなる。裏技を使わない場合は、レベルを最大近くまで上げるのが前提になっており、レベル上げに時間を大きく奪われてしまう。前作のようにたたかうだけで終わるならまだしも、敵に合わせて行動を選択するのは大変な作業になる。レアドロップを狙うなら問題はないが、ごく一部のユーザー以外にはしんどい調整になっている。

 そして、忘れてならないがパスワード問題。約50文字を常に正確に書き留めるのは難しく、自分の文字の汚さを思い知らされた小学生は数知れず。ザラキより強力な即死呪文「じゅもんがちがいます」を使われたとき、「"ぬ"と"め"」や「"は"と"ほ"」など、間違えやすい文字を入力し直したりする。そんな足掻きもまた過ぎ去りし時の記憶の断片なのである。

まとめ

 RPGに対する認知が広がり始めたタイトルでもあったため、ライトゲーマーお断りの硬派な印象を与えてしまったことは否定できない。気軽に攻略を見れなかった時代だからこそ、コミュニケーションツールとしての能力は高かったとも言える。

 最後に『Love Song 探して』や『この道わが旅』といった名曲が多かった『ドラクエ2』。エンディングで『この道わが旅』を聴きながら苦しかった冒険の記憶をたどるのが、クリアした者にしか得られない最高のカタルシスなのだ。

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