『Celeste(セレステ)』【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(11)~
『CELESTE』は、「トライアンドエラーの醍醐味を味わえるゲーム」である。
トライアンドエラー、つまりミスを繰り返しながら覚えていくいわゆる"死にゲー"のことである。Steamのレビューで常に”圧倒的に好評”を獲得している理由は何か。独自の視点で解説していきたい。
最高級のアクション
『CELESTE』の魅力は、なんといってもアクションにおけるクオリティの高さ。兎にも角にも難易度調整が絶妙なのだ。ちなみに絶妙とは「この上なく巧みなこと」の意味である。
まずは、エリアの区切り方。何度も繰り返してプレイするのだから、ひとつのエリアが長すぎるとやり直す範囲が広くなってしまう。そこで、序盤はスクロールが少ないほぼ一画面に限定している。基本的なアクションやジャンプの軌道などを頭と体に叩き込む。
その後、ストーリーの進行に合わせて新しいギミックや特殊動作が追加され、難易度が徐々に上がっていく。その追加のタイミングもまさに絶妙。チャプターごとに一つずつ追加してくことで、クリアしたときには自然とその操作に慣れる仕組みになっているのだ。
ギミックや特殊動作をこなすだけでなく、襲いかかる敵も存在する。逃げるという心理的プレッシャーが加わることで、単純にゴールへ向かうだけのルーティンワークに変化を与えてくれる。
そもそも攻撃をするゲームではないが、一部の敵は踏んで気絶させたり破壊ができる。チャプター4の雪玉など、まず踏めないだろうと思ったものが踏めると楽しいものである。オオシロさんの場合は、彼のキャラクターによるところが大きい。
運搬も特殊なギミックのひとつ。とくに問題がなかった状況でも、運搬中だと異なる顔を見せるフィールド構築には舌を巻く。運搬アイテムを利用してスイッチを押すなど、パズル要素の塩梅も文句無し。
隠しテクニックも多く存在し、それを利用してタイムアタックやギミックの無視も可能。やりこみ勢への配慮も完璧であり、いかなるユーザーに対しても配慮が行き届いている。
ストロベリーという自己満足
『CELESTE』は、ストーリーをクリアすることが第一目標。そして、その次の目標として設定されているのが、ストロベリーの回収である。
通常の攻略よりも若干難しい配置にすることで、プレイヤーをいやらしく誘惑してくる。”特に意味がない”というのがポイントで、自己満足だからこそ人は熱くなれる。この人間の心理を上手く利用したゲームデザインもまた素晴らしいのひと言に尽きる。
カセット(B面解放)
すべてのチャプターにはカセットテープが存在する。入手すればB面(アナザーステージ)がプレイできるようになる。B面はかなり難しく、プレイヤーの心を容赦なく折ってくる。しかも、アップデートによる追加チャプターのプレイには攻略が必須になるため、多くのプレイヤーが涙目になりながらミスのカウンターを増やすハメになる。
ある程度の腕は必要だが、ストーリーを終わらせているならなんとかクリアできる調整なのが恐ろしい。このゲームの制作者が、極めてロジカルにステージ構成を練り上げているのは間違いない。インディーズだからこそ、この完成度まで高められたのだと思う。手のひらで転がされていると分かっていても、それはとても心地の良い体験である。
秀逸なストーリー
ここまではアクションの素晴らしさについて語ってきたが、付随するストーリーもまた評価すべきファクターである。
物語は、主人公の少女マデリンがセレステ山に登るというもの。マデリンの内面の問題と、出会った仲間を通じて成長していくヒューマンドラマになっている。
登場する敵もストーリーに即しているため、物語とアクションを同時に盛り上げてくれる。扱っているのは普遍的なテーマであり、多くのプレイヤーの共感を誘う内容になっている。
和訳に関しても明らかにおかしな部分はない。オオシロはかなり難しい翻訳になったと推察するが、そのキャラクターのおかげでコミカルな存在にうまく落とし込めている。
気になった点
アップデート後の難易度の高さは少し気になった。緩やかな上昇ではあっても、キャプター8や9のリトライは心が折れそうになることがほとんど。ひとつのエリアにかかる時間も多くなり、達成の喜びと労力のバランスが釣り合わなくなる。
プレイヤーの腕の差と言われればそれまでだが、アクションが得意でない方にはオススメし辛いのも事実である。
まとめ
繰り返しになるが、トライアンドエラー型のアクションゲームでこれほどのクオリティは記憶にない。やれることはそれほど多くないが、ひとつの追加要素で無限の可能性を示してくれたことは称賛に値する。
アクションゲームが好きなら、一度はプレイしなければならない。そう思わせてくれる魅力が、この作品にはある。
山に登るのは、そこに山があるから。アクションゲームもまた然り。
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