『宇宙よりも遠い場所』【レビュー・感想】~アニメノ読ミ物(3)~

 『宇宙よりも遠い場所』(以下よりもい)は、「ぼっちが集まって"ともだち"になる話」である。
 2018年に放送されたTVアニメで、4人の女子高校生が南極へ行く物語。

テーマは「ストレス発散」

 「澱んだ水が溜まっている。それが一気に流れていくのが好きだった。決壊し、解放され、走り出す」
 第1話の冒頭で独白するキマリの台詞。『よりもい』が描きたいのは、"ムカついている自分の感情をぶちまけること"だと宣言している。結月の拒絶、めぐみの絶交宣言、報瀬の「ざまあみろ」、日向の「ふざけんな」は、まさにテーマに即した"心の叫び"だ。

4人の友情

 主役である4人の女子高校生は、それぞれが心に傷を抱えていた。その傷は、学校の同級生などから負ったもの。孤立し、落ち込んだり苛立っていた彼女たちは、偶然が重なり寄り集まっていく。
 その理由は、同じ傷を負っていたから。同じ境遇だからこそ、お互いの気持ちがよく分かる。知り合って間もないのに、まるで昔からの親友のように接することができる。
 この物語の目的は南極へ行くことではなく、4人の絆を紡いでいく過程なのだ。

気になった点

 どうしても触れておきたいのは日向の矛盾。5話で「悪意に悪意で向き合うな」と言ったにも拘らず、11話で悪意に悪意を向けることで解決している。悪意をぶつけたのは日向本人ではなかったが、それで円満に解決したと幕引きさせるのは無理があったように思う。

 あとは物語の内容と登場人物との関係性の希薄さ。南極へ行く理由が報瀬にしかないのは酷すぎる。そのため、ドラマを南極に絡めることできず、日常系のユルいシーンばかりになったのはもったいなかった。

まとめ

 結論として、巷で評されるほどの期待値には及ばなかった。
 とくに日向の矛盾や一方的な罵倒はあまり気分の良いものではなかった。
 せっかくの舞台である南極をもっとストーリーに活かすことができれば、違った手触りになっただろう。

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