『Outer Wilds(アウターワイルズ)』【感想・雑記】~ゲームノ読ミ物(1)~

2024年7月11日

 『アウターワイルズ』は、インディーゲームのなかでもかなりの知名度を誇る、アクションアドベンチャーの名作である。

 これはDLCまでクリアした感想を交えながら、気になった点などをユカイツーカイに紹介していく読み物である。内容はかなり緩いため、肩の力を抜いて気楽に読んでほしい。
 なお、ネタバレがあるので、未プレイの方はご注意いただきたい

アウターワイルズの概略

 とある惑星系のお話。主人公は探索船で宇宙へ飛び出し、個性豊かな惑星を調査する。その目的は、かつてこの惑星系に存在した種族Nomaiの廃墟や施設を巡り、さまざまな謎を解明していくこと。端的に言えば、そんな感じのゲーム。

 その謎のひとつが、約20分でリセットされるタイムループ。なぜ、同じ時間が繰り返されるのか。どうして、自分が命を落とすと時間を戻されるのか。そして、何ゆえに主人公の記憶がリセットされないのか。

 断片的な情報を集めながら一歩一歩真実に近づいていく。かなり地道な作業であり、例えるなら研究者が自らの推論を信じて研究に没頭する行為に近い。それこそが、"アウターワイルズは人を選ぶ“と言われる所以である。

アウターワイルズでできること

探索船の操縦

 まずは、探索船の操縦を覚えなければならない。もしも、宇宙へ出なければ、マシュマロを焼くだけの人生を全うすることになる。それはそれでワイルドなプレイと呼べなくもないが
 探索船は、重力や慣性を計算して操作する。何度も"アガト・グラビティ(重力にまかせて勢いよく大地に突っ込む行為)"を繰り返しながら、少しずつ慣れていくしかない。間違っても私のように謎解きで行き詰まり、ストレス発散で故意に"アガト・グラビティ"を発動させることはしないように。

シグナルスコープ

 シグナルスコープは、翻訳、仲間のHearthian(主人公の種族)や救難信号の位置特定などを行える優れたガジェット。
 仲間のビーコンを受信すると、それぞれが持つ楽器の音色が聞こえてくる。つまり、何万キロ離れていても、仲間の存在を感じることができるのだ。探索中でも孤独感をあまり感じない理由は、この音色ビーコンによるものが大きい。逆に主人公のビーコンは受信しても無音の可能性大なので、次回作では何らかの楽器(オタマトーンとか)を持たせてあげてほしい。

偵察機

 偵察機は、シグナルスコープよりも局所的な調査を目的とするガジェット。どこかに設置して周囲を撮影したり、暗い場所をライトで照らしたりできる。
 もっとも活躍する場面は幽霊物質の解析。目に見えないデンジャーゾーンを可視化してくれるおかげで、幾度となく主人公が幽霊になるのを防いでくれた。
 しかし、この幽霊物質。言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごいネーミングだ。

マシュマロを焼くということ

 アウターワイルズを語る上で、欠かせないのがマシュマロである。マシュマロのないアウターワイルズなど、もみじ饅頭の形状をもみじ以外に変えるが如き所業。それはもう、もみじ饅頭とは呼べない。

 とはいうものの、マシュマロを焼くこと自体に意味はない。情報を頭で整理するときの手遊びのようなものである。これから何をすべきか。次はどの惑星へ向かうのか。今日の夕飯は何を食べるのか。明日、何時に起きるのか。世界が平和になるにはどうすればいいのか――。
 一度レールを外れた思考は、まったく使いものにならない無駄骨。消し炭になったマシュマロと同じである。

 ちなみに、私はマシュマロを最高の焼き加減で食べたことが一度もない。まるでキャラメルコーンやカールを食べているような、サクサクと歯切れの良い音を立てている。
 遠くからじっくり熱を加えるのが正解らしいが、どうしても我慢できず焚き火に突っ込んでしまう。そもそもマシュマロを炙って食べた経験がないため、正解などわかるはずもない。
 マシュマロの焼き加減はわからないが、中にチョコクリームの入ったやつが美味しいということだけは知っている。

ワイルドなやつら

 敵という概念が少ない作品だが、明確に敵と呼べるものが3つ存在する。

アンコウ

 闇のイバラに生息する最も敵らしい敵。率先して行きたくはないが、無視できないのはつらい。攻撃手段がないため、刺激を与えないように通過するしかない。障害物のない場所でロックオンされると、この先生きのこる術はない。たとえ「アンキモ」と三回唱えたところで、やつらは許してはくれないのだ。

DLCに登場する彼ら

 本作は荒廃した世界観だが、露骨なホラー演出はない。
 しかし、DLCに登場する彼らは明らかにホラー要員として配役されている。わかりやすく言えば“肝試しのお化け役"である。
 彼らに捕まると、すさまじい剣幕で殴りかかってくるように見せて実際は火を吹き消すだけ。見た目が怖いのではなく、暗がりからいきなり出てくる驚きの方が強い。何が気に入らないのか知らないが、とにかく激おこぷんぷん丸である。なんも、そんな青筋立てんでもええやねん。

最初の集落の"3D酔い"

 私にとって、これが最大の強敵("とも"ではない)だった。本当に本当に、最初の集落での情報収集は苦痛しかなかったのだ。
 入り組んだ道が多く、周囲は壁に囲まれている。視点をぐりぐり変えるたびに喉の奥から込み上げてくる何か。いつしか意識が朦朧とし、会話の内容すら理解できなくなる。とどめは、子どもたちとのかくれんぼ。この強烈な不快感を抱えた状態でかくれんぼイベントを考えたやつこそ本物の"鬼"に違いない。
 あれだけの苦痛を味わったあと、溜まりに溜まったストレスをぶつける場所がないのも辛かった。気持ち悪さだけが残る、暖簾に腕押しのような敵であった。

ワイルドなふれあい

焚き火

 本作のキービジュアルになっている"焚き火"。実はとんでもないパワーが秘められていることが判明した。

 エンディングにて、焚き火は種族や言葉の壁を越える交流が行えることを証明している。つまり、焚き火を利用すれば、どんな悪党でも、銀河ギリギリぶっちぎりの凄い奴でも朋友になれるのだ。
 つまりラオウとサウザーとアミバとウイグル獄長が焚き火を囲んでマシュマロを焼いていれば、きっと世紀末救世主的な展開は起こらなかったはず。アンコウも然り。

 また、仲間たちが演奏する音楽にも、とんでもないパワーがある。言葉の通じない人間はもちろん、異星人とも心を通わせることができるのだ。ソースはアニメ作品の『マクロス7』。とくに主人公の熱気バサラが山を動かそうと熱唱するシーンは、視聴者を銀河の彼方へ置いてきぼりにするほどのハジケっぷり。花束の少女も最後まで謎感を貫き、己の存在価値をよく心得ている。『聖闘士星矢』の魔鈴さんではないが、最後の最後に、「ところであんた誰?」とツッコみたくなるモブキャラは貴重な存在。いや、本当に誰やねん。

Nomai

 過去、この惑星系に存在した種族。探索のヒントを遺してくれた偉大な先人である。
 彼らの言語はシグナルスコープで解読が可能。重要なヒントもあるが、壁に描かれた殴り書きには、その瞬間の心情が刻まれていたりする。極めて私的な心の叫びは、共感を生むものも少なくない。

 彼らの言語は渦巻き形で形成され、植物のように連なっている。その図形を見てまず思い浮かんだのは、ドリームキャストのマークである。そこで私はある驚愕の事実に辿り着いた。実は、湯川専務はNomaiの末裔なのだ。ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!!
 あの当時出していたアーケードゲームの基盤はNaomiという名称だった。その文字を入れ替えると、なんとNomaiになるではないか。この発見に打ち震えた私は、“湯川専務Nomai説”を高らかに打ち立てたのである!!
 この仮説を信じるか信じないかはあなた次第……。

ワイルドに生きよう

 アウターワイルズから得たもの、それは『人と人とのつながり』の素晴らしさを再認識したことだ。

 どんなに科学が発達しようと、人間そのものは今もオールドタイプ。オンラインで知り合うのが当たり前になっても、親密になればワイルドなつきあいになる。中にはHearthianやNomaiのように利口な人もいれば、アンコウだっている。
 しかし、そんな"ガルガルやろう"にびびっていたら何も始まらない。世の中には、きっとどこかに気の合う仲間がいるはずだ。自分が理想とする未来を描き、手元にあるエンジンのスイッチを入れるのだ。

 さあ、あなたも今すぐ外宇宙へ飛び出そう。ただし、人生はリセットのできない一度きりの航海。決して後悔のないように。

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