『ドラゴンクエスト3 HD-2D(リメイク)』をプレイして思いの丈を書いてみた。【感想・レビュー】~ゲームノ読ミ物(21)~

2025年1月31日

 2024年11月14日にマルチプラットフォームで発売されたRPG。これまで多くのハードで移植されてきたドラクエ3だが、今回はHD-2Dで大々的にリメイクされることもあり注目を集めていた。
 ファミコン版を当時プレイした一人である私が、本作をプレイしてどう感じたのか。独自の視点で語っていきたい。ネタバレには最低限に留めているので、これからプレイするか迷われている方の参考になれば幸いです。

ストーリー

 大筋は原作と同じ。
 一番の違いは、オルテガの話が追加されていること。過去に立ち寄った場所を訪れるとイベントが発生。オルテガの過去シーンが追体験できるようになった。覆面パンツの変態オルテガはもういない。

 一部のイベントにボスが追加。とくにオーブイベントは、やまたのおろちとボストロールだけだったので必然の処置だろう。

 そして、エンディングのラストで知らされる衝撃の事実。ΩΩΩ<な…なんだってーー!!

 クリア後におまけがあり、スーパーファミコン版のものにくわえて更にイベントが追加されている。

ゲームバランス

 難易度は"バッチリ冒険"でプレイ。
 ファミコン版と比較すれば、全体的に難易度は低下している。戦闘は速度アップやオートの個別命令など、現代に合わせた仕様になっている。
 とくぎが増えてやれることは増えた。そのかわり、呪文の依存度が大幅に低下。魔法使いには厳しい時代になった。

 一部のボスを除き、レベルが適正であれば雑に戦ってもなんとかなるバランスになっている。

追加要素

新職業

 職業に盗賊とまもの使いが追加。

 盗賊はフロアにあるおたからの数が分かる『とうぞくのはな』や、おたからの場所を直接確認できる『レミラーマ』を覚える。探索要素の多い本作において便利な能力を覚えてくれる。フィールドやダンジョンの探索では、トヘロスの効果を持つ『しのびあし』が活躍。
 攻撃面は『らせん打ち』が優秀。1グループへのダメージにくわえて混乱付与のおまけ付き。人権武器のブーメランを装備できるため、単体ボス以外はブーメランか『らせん打ち』の二択で対応可能。

 まもの使いは、はぐれモンスターの収集に役立つ。一人でもいれておけば逃げられなくなるメリットも有る。においぶくろやきえさりそう等の道具を用意する必要がなくなる。

 レベルアップで覚えるとくぎにあまり使えるものはない。そのかわり、はぐれモンスターの捕獲数で覚えるとくぎはめちゃくちゃ優秀。とくに『まものよび』と『ビーストモード』は、最後まで使える最強のとくぎである。
 唯一の欠点はレベルアップに必要な経験値が多いこと。レベルアップによるとくぎを全て覚えるなら結構な時間を要する。けれども、有用な(はぐれモンスターの捕獲数に応じて覚える)とくぎは、一回戦闘するだけで覚えられる。そのため、全とくぎのを覚える気がないならLV20で再転職した方が時間効率は良い。

とくぎ

 原作では呪文の使えない職業は、たたかうことしかできなかった。とくぎが追加されたことで、戦士や武闘家にも戦略性がもたらされた。
 中には全体攻撃や状態異常付与など優秀なものが散見される。呪文とは被らない性能を追求した結果、利便性の高いとくぎが多くなったように思う。

 逆に呪文は割を食うことになった。性能が被るとくぎもあり、マホトーンで封じられると使えない。とはいえ、メリットはもちろんある。やまびこのぼうしを装備すれば連続発動できること。そして、バフやデバフの付与。ビーストモード中であれば4回発動もできるため、バフやデバフの重ね掛けを1ターンで完結できるのは大きい。

見た目の変更

 ダーマの神殿にいるホイミスライムのホミちょに話しかけることで容姿等の変更が可能。
 具体的には容姿、髪色、ボイスの3種類を変更できる。職業を変えたときなど気軽に変更できるのは嬉しい。
 ただし、勇者だけは変更ができない。厳密にはクリア後のおまけとして髪色だけ変更が可能。すなわち、疑似スーパーサイヤ人にはなれる。

仲間の貸し借り

 ルイーダの酒場で他人のキャラクターを借りることができる。しかし、キャラ育成はドラクエの醍醐味。わざわざ一枠を犠牲にして用心棒を入れる必要性は感じなかった。そもそも難易度をいつでも調整できるのだから、この機能は無理に入れなくてもよかった。

フィールド

キラキラ

 本作ではフィールドにアイテムが落ちている。見た目からキラキラと呼ばれることが多い。
 大抵は普段使いするアイテムや安価な武器防具なので、売って資金源することが多い。終盤になるとレアアイテムも落ちているので、ゲームの進行度につれて重要度は増す。

ひみつの場所

 宝箱やはぐれモンスターがいる隠しエリア。宝箱の中身はピンキリだが、メインははぐれモンスターにある。
 地表にあるひみつの場所に関しては、一見して判断ができる。厄介なのは海にある岩礁。広大な海を船で地道に探す必要があるため、範囲が広く取りこぼす可能性は高い。この作業が本作で一番大変かもしれない。

はぐれモンスター

 はぐれモンスターは後述のモンスター・バトルロードに出場させることができる。はぐれモンスターの捕獲数は重要で、まもの使いのとくぎを覚える条件にもなっている。さらにクリア後のコンテンツにも関わってくるので、面倒でも集めておかなければ後悔する。
 場所によっては複数いる場合もあり、なかなかいやらしい。

モンスター・バトルロード

 はぐれモンスターでパーティを組んで戦う闘技場。個別のコマンドは使えないので、作戦を駆使することになる。
 とはいえ、戦略性はそれほど深くない。強いモンスターを集めるだけで余裕をもって勝利できる。どうしても勝てない場合は、最後のはぐれモンスターを入れて無双しよう。他にも手っ取り早い禁断の技もあるが、これは倫理的な問題によりあえて触れないでおく。

ファミコン版との違い

 一番の違いは冒険から探索に重きを置いたこと。これは、私が原作をクリアしていることにも繋がるので一概には言えない。
 メニューを開けば次の目的地が一目瞭然。プレイヤーはそれをなぞっていくだけなので、自分で物語を紡いでいる感覚はかなり希薄だと思う。
 それよりも、自分の足でキラキラやひみつの場所を探し回る方がゲームとしての充足感は大きい。ちいさなメダルもあるため、その傾向がより顕著に感じられた。

 1から10まで全部指示されて世界を救ったところで、感動が生まれるはずもないというのが結論である。

ファミコン版からよくなった点

グラフィックの向上

 これに関しては間違いない。ドット絵であることは、ファミコン原作の作品において最重要ポイントである。ドラクエ8のようなグラフィックでのリメイクを期待する声も多く聞かれたが、個人的にはHD-2Dが正解だったと思う。

ボイス追加

 ボイスが追加されたことで、イベントの臨場感は増している。感情や雰囲気が声から伝わるので、より劇的な盛り上がりをサポートしてくれる。

 とは書いたものの、実は私はボイスをオフにしてプレイしていた。
 これは自論だが、ドット絵のゲームにボイスは不要だと思っている。そもそもドット絵という抽象的な記号で表現されているものにリアルな声をあてるのは違和感がある。あえて書く必要もなかったのだが、この場を借りて吐露させていただいた。
 その結果、イベントでボイスが入る場面では不自然な間、すなわち”ボイス待ち”があったことも報告しておきたい。

職業ととくぎの追加

 職業が追加されて職業の選択肢が広がる。そして、とくぎの実装で呪文を使えない肉弾タイプの職業にも戦略性が増した。
 さすがに原作準拠だとやれることが少なすぎるので、順当な追加要素である。古臭い呪文と比べて新参者のとくぎが高性能すぎた感は否めない。ヒャダインなど使う場面が思い当たらない。

ルーラの大幅強化

 ルーラで登録される場所が多くなった。ダンジョン等も対象になり、何度も同じフィールドを歩く必要はない。
 さらに屋内やダンジョンでも使えるようになった。それまでは天井に頭をぶつける演出がお約束で、ドラクエの風物詩になっていた。
 効率を考えれば理解できるが、それで被害を受けたのがリレミトである。ダンジョン内からルーラで直接戻れるようになったため、その存在価値は急降下した。その結果、意図的に選択しないと使うことがないネタ呪文と化した。泣かせるのぅ。

 手間がかかる、面倒くさいという意見も理解はできる。しかし、ゲームに効率を求めすぎると作業感が強まる危険性が高まる。
 定番になっていたものを、利便性のためになくすのはゲームにとって有意義とは思えない。ゲームには面倒や枷で縛られているからこそ見出せる楽しさも数多くあるのだ。(例えばモンハンにおけるペイントボールやホットドリンク等も同じ)

ボス追加

 原作ではボスが登場しないダンジョンやイベントが多かった。そこに新たなボスを設定したことで、原作ユーザーにも新鮮な驚きがあった。
 追加されたボスは、シリーズファンにはニヤリとする容姿をしている。この演出に関しては、お見事と称賛を送りたい。

エンディング後のおまけ

 エンディング後のイベントに関しては、スーパーファミコン版にもあった。本作は更にパワーアップしており、やりこみのモチベーションアップになっている。
 クリア後のレベル上げは往年のやり方しかないので、ひたすらモンスターを倒す原点回帰の作業を繰り返すことになる。このレベル上げをしているときが、原作のプレイにもっとも近い感覚になった。

気になった点

冒険している感覚が薄い

 リメイクなので仕方ない部分もあるが、目的を常に示されているのはつまらない。船を手に入れても、地図に書かれた印をなぞるだけではドキドキ感も無い。テンタクルスの大幅イメチェンも違う意味で驚いた。

メガンテで死ななくなる

 これはかなり衝撃的だった。ばくだんいわ3体に3連続メガンテを受けたが、誰一人死ななかった。逆に全滅するよりショックな一幕である。ただただ悲しい。

ラーミアの劣化

 ラーミアでの移動は心躍るものだった。しかし、本作のラーミアは演出過多というか、直感的に乗り降りがしづらい。ドラクエ8のようなブーストボタンもない。ルーラの気遣いができるなら、ラーミアにも少し分けてほしかった。鳥が嫌いなスタッフがいたのかもしれない。

だいたい金欠の旅

 序盤から中盤にかけてだが、やけに金欠の時期が多かった。新しい町へ行っても全員分に装備を購入することができない。それどころか、武器を数人に買ったら終わりという懐具合。モンスターの落とすゴールドはもう少し多くしてほしかった。

ぬいぐるみの呪い

 一部の防具は装備すると見た目が変化する。そのひとつがぬいぐるみである。
 たまたまキャットバットが落としたそれは、とても強力な防具だった。
 勇者に装備したのが最後、ぬいぐるみの呪いに苛まれることになる(※呪いの装備ではない)。イベントやボス戦でも、一番目立つ位置に陣取るぬいぐるみ。シリアスな場面も台無しである。それでも性能が優秀すぎて脱ぐことができない。まさに呪いの装備なのだ。私は恨む。運悪く落としたあのキャットバットを。

難易度をいつでも変更可能

 本作は3つの難易度を選択できる。それ自体は構わないのだが、問題はいつでも変更ができること。
 極端にいえば、難しい場面を簡単にしてやり過ごすことが可能になるのだ。ライトユーザーへの配慮かもしれないが、それは余計なお世話だろう。そもそもゲームにミスはつきものだ。壁にぶち当たることなど日常茶飯事。躓くことなくクリアをしても達成感など得られない。

 気を使いすぎた結果、最悪の選択をしてしまったと思う。製作スタッフは勘違いしているようだが、そもそもドラクエは難易度が高いゲーム。誰でも気軽にクリアできるものではない。だからこそ達成感があるし、エンディングで感動を覚えるのだ。

ブーメランの万能感

 本作には原作にない武器種があり、そのひとつがブーメラン。
 通常攻撃で全体にダメージを与えられる強力な性能で、まもののむれに対して絶大な効果を発揮する。これまでの全体攻撃はイオの独壇場だったので、無制限で使えるブーメランの出現によりイオ系呪文はその価値を大きく落としてしまった。
 強すぎるあまり勇者でさえ最強の剣よりブーメランを装備する始末。伝説の勇者の武器がブーメランはちょっと締まらない。

リレミトを殺した件

 ルーラのところでも語ったが、リレミトがほぼ無価値になったのは悲しい。ルーラが使える前でもキメラのつばさで代用できるため、本当に使うところがない。
 デバッグで誰も意見をしなかったのだろうか。ダンジョンから脱出して町へ戻るまでの移動もドラクエらしさだったが、それも色褪せた過去のはなし。ワンボタンで一瞬にワープできる時代。現実にどこでもドアがないのは不思議でしょうがない。

ルックスAB

 男女の性別ではなくなり、ルックスA、ルックスBになった。ただし、名称が変わっただけで男女と同じ扱い。
 行き過ぎたコンプライアンスの影響を一番に受けたのが女戦士、もといルックスBの戦士のインナー問題。とにかく死ぬほどダサい。原画を見てみると、あとから無理やりインナーを追加したのが丸わかりである。おそらく土壇場で謎の圧力が加わったのだろう。

 納得いかないのは、ルックスに変更したのにルックス専用の装備があること。見た目の違いだけなら、ルックスAがあぶない水着を装備しても問題ないはずだ。ルックスBがステテコパンツを履くのも構わない。しかし、ルックス限定である。この中途半端さは白けるし、そもそも創作物に持ち込むことではない。

 ホミちょでルックスを変更できないのも不思議。見た目の違いだけなら変更してもよかったのではないか。この変更に関しては大きな汚点を残してしまった。

まとめ

「名作を現代風にアレンジしただけの凡作」

 私は原作のドラクエ3をプレイしていたから、最後まで楽しくできた。これが新作としてプレイしたなら、きっと幻滅しただろう。あの名作と謳われた作品が、実際にプレイしてみると大したことなかった。そう思われるのが残念でならない。もちろん十分楽しめたのであれば、それに越したことはない。

 現在ではファミコン版を気軽にプレイする環境はない。もしプレイできるとしても今プレイして楽しめるかと言われれば疑問符がつく。名作と謳われたドラクエ3を現代のゲームに慣れたユーザーが体感するのは不可能なのかもしれない。

 それでもドラクエ3が名作であることは疑いようのない事実。伝説となったシリーズは今も続き、新作の開発が行われている。
 続編であるⅠ・Ⅱをプレイするかは分からないが、少なくとも期待値はⅢのときとは比較にならないほど下がっている。

 悲しいけれど、それが原作ユーザーが『ドラクエ3 HD-2D』をプレイした偽らざる正直な気持ちなのだ。

PR