『カエルの為に鐘は鳴る』【紹介・感想・雑記】~ゲームノ読ミ物(5)~

2024年6月16日

 『カエルの為に鐘は鳴る』は、1992年に任天堂から発売されたゲームボーイ用カセット。ジャンルはアクションRPG。TVCMでは"変身ギャグベンチャー"と称していた。例えるなら任天堂が誇るアクションPRGの『ゼルダの伝説』を簡略化したもの、と考えればイメージしやすいだろう。
 そんなゲームボーイの隠れた名作と呼ばれる『カエルの為に鐘は鳴る』の素晴らしさについて少し語っていきたい。

ゲームのシステム

 まず大きな特徴として、レベルや経験値は存在しない。キャラクターの強化は、3種類のセイントストーンを入手することで行われる。
 レベル制を採用しない一番の利点はゲームバランスの調整。レベルだとユーザーごとに成長度合が微妙に異なってしまう。アイテムによる強化なら、成長度合を完全に操作することができる。セイントストーンを回収するだけで確実にクリアできるため、ゲームの難易度は必然的に易しくなる。
 デメリットはあそびがなさすぎて作業感が出てしまうこと。ゼルダのように探索で隠しアイテムを探すといった要素に乏しいのはもったいなかった。ギャグベンチャーなのに、あそびがないのは少々つらい。

 アクションに関しては、それほどシビアなものを要求されない。マリオやロックマン、チーターマンのように反射神経を要するスリリングな場面はごくわずか。アクション好きには物足りなさを感じるだろうが、アクションの苦手な方にも楽しんでもらえるのは大きい。
 もしも、スリリングなアクションを求めるならチーターマンでもやればいい。ただし、どこでプレイできるのかは分からないけれど。

 もうひとつの特徴として、ちょっとしたパズル要素にも触れてみたい。
 主人公は人間とカエルとヘビに変身できる。それぞれが特性を持ち、場面に応じて切り替えながら進めていく。アクション部分においてもっとも楽しい要素であり、あまり頭を使わない本作において、適度なストレスが感じさせてくれる大切なギミックでもある。
 主人公がカエルになる設定を、ゲーム内でうまく消化しているのは好印象。虫相手なら人間のときよりも強い謎の無双設定だが、タイトルに名前を冠している以上はカエルに多少のひいきがあって然るべき。たしかにカエルが強かったゲームはほとんど記憶がない。カッパはあったけれど。

ギャグベンチャー

 本作のシナリオにおける重要なポイントは、コメディ要素が強いこと。其れ即ちギャグベンチャー也。
 ティラミス姫を救い出すために、様々な無理難題を突破していく主人公。ストーリーはシリアスだが、隙あらばコメディを差し込んでくる。とくに喜怒を表現する際には、巨大な文字になるコミカルな演出を盛り込んでいる。エッジの効いたSEとの組み合わせはインパクトがあり、主人公の感情を直感的に受け取れる。

 ミルフィーユ・タイムズは、方々の町や村に設置されている壁新聞。主人公が行ったことや、これから行うべき事柄をリアルタイムで掲載している。ストーリーが進行するたびに更新するので、何をすべきかを再確認するツールとしての機能も果たしている。ちなみに四コマ漫画はない。ちなみに私はコボちゃんよりサンワリ君派。

 唯一の離島であるクロザ島には”娯楽の殿堂ナンテンドウ”がある。元ネタはあえて言う必要もないだろう。某社の”あくびをクリエイトするニャムコ”と同じパターンである。
 特筆すべきは食堂にディスクライターとディスクファックスがあること。開発時はまだ全国のゲームショップに配備されていたため、ごく自然にディスプレイとして設置したのだろう。本作が発売されたのは、スーパーファミコンが発売されて2年が経とうとした時代。任天堂の歴史の一端に触れられるところも、ナンテンドウの魅力。

 ここからはギャグベンチャーのギャグについて触れていきたい。
 名称では、金山を掘るために結成された"カザンオールスターズ“やシタイン博士が造る新型パワードスーツ"東京コミックショーZ“がある。前者は今もなお活躍されているが、後者は世代がかなり限定されてくる。ヘビが登場するからこの名前に決めたのだろうが、現代人にはオリジナルで命名したと思われても仕方ない。モノクロの画面で「レッドスネーク カモォ~ン!!」と叫ぶのがまたシュールである。
 そして、金山には埋蔵金掘りに夢中のコピーライターがいる。リアルタイム世代のユーザーなら思わずニヤリとするはず。おそらく彼は埋蔵金に辿り着くことはない。ちなみに笑顔のセールスマンは出てきません。

ズバリ、この作品の魅力は?

 『カエルの為に鐘は鳴る』の最大の魅力はストーリーである。
 中盤まではコメディのノリを崩さず進行するが、終盤になると一変する。緊張感が急激に高まり、男の覚悟、男の決意、そして男の友情を描くラストバトル。そこからエンディングまでの流れは息を呑むほどの完成度で、あえて言葉にするのは野暮である。
 主人公の一貫した真面目さと、リチャードの王子然としたプライドの高さ。二人の友情物語の結末は自身の目で確認していただきたい。

まとめ

 誰でも遊びやすく、安心してオススメできる。終始楽しさを追求し続けた姿勢にはただただ感服する。スイッチオンラインにて配信が開始されたので、今すぐやるべき名作。クリア済みの方も、あの感動を再び。
 おとなも、こどもも、おねーさんも、そしてコピーライターのおにーさんも。

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