TVアニメ『明日ちゃんのセーラー服』【紹介・レビュー・感想・評価】
概要
2022年1月から全12話で放送。原作はWEBコミック配信サイト『となりのヤングジャンプ』にて連載している青年漫画。原作者は博。
あらすじ
私立女子中学の蠟梅学園。明日小路は、この学園のセーラー服に憧れていた。母お手製のセーラー服で入学式に向かうが、今は廃止されてブレザーになっていた。学園長は特例としてセーラー服の着用を許可したが、選択は小路に委ねられることになった。小路が選んだのは――憧れのセーラー服だった。
登場キャラクター
明日小路
アイドルの福元幹を愛する少女。運動神経が抜群で、いつも全力で駆けまわっている。実は頭も良く、成績はトップランカー。スペックは完璧だが、田舎暮らしが長いために一般的な知識が欠如している。
木崎江利花
爪切りお嬢様。小路が最初に知り合ったクラスメイトであり、他の生徒とは少し違う絆を感じる。具体的な言及はなかったが、ピアノやヴァイオリンなどの楽器も弾けるのでお嬢様のはず。
谷川景
写真を撮るのが好きで、自撮りにも目覚める生粋の写真家気質。集中すると周りが見えなくなるタイプ。
水上りり
関西弁の水泳少女。勝敗に関わらず真剣勝負にこだわる。
兎原透子
おしゃべり大好きで、お菓子作りが得意。ファッションにも精通している。やらかしそうな雰囲気を持つが、小路の方がやらかすので案外トラブルメーカーにはならない。
古城智乃
読書好きの眼鏡っ子。本の虫だが、大熊が興味を抱くかどうかは不明。
峠口鮎美
東北訛りが強烈すぎて、他の部分に個性がない。むしろ、その一つの個性で生きていける。
平岩蛍
非常にアニメ映えするキャラクター。しかし、出番はかなり少ない。人気が出そうなのにあえて使わなかったのは評価したい。小路の応援に応える蛍は”かわいいの塊”なので要チェックや!!
大熊実
生き物大好き少女。観察対象に人間も含まれているのが面白い。
四条瑠生奈
あまりアニメでは見かけないタイプ。このふくよかな質感をうまく表現できているのがすごい。彼女のおかげで作品全体のリアリティが底上げされている気がする。
戸鹿野舞衣
蛇森と同部屋で7話のキーマン。努力の積み重ねが大切であることを教えてくれる。
蛇森生静
エレキを愛する少女。7話のメインを務め、成長する姿は主人公顔負け。演奏シーンは本作における屈指の名場面。
神黙根子
とにかくよく寝る。前世は猫だったのかもしれないと思うぐらい猫っぽい。実は猫かもしれない。
龍守逢
自分に厳しい分、他人にも厳しい。彼女には申し訳ないが、うまくいかないときの“ぐぬぬ”が一番輝いて見えるタイプ。
苗代靖子
精神年齢高めの少女。現実にいそうなリアル系。
鷲尾瞳
ツンツンしているが、認めた相手には心を開く。クラスの中では最高のツンデレを見せてくれそう。
どういう人向けか
・日常を描いた作品が好き。
・青春を感じたい。
・友情の素晴らしさを感じたい。
・やさしいせかい(ストレスのない世界観)が好き。
レビュー
「明日小路の夢の青春」
本作は明日小路の学園生活を描いている。
主人公である彼女の真っ直ぐな性格や純朴さがこれでもかと表現されている。その打算のない行動と笑顔に触れれば、好印象を受けるのが人情というもの。
ひとりぼっちの小学校を卒業した小路にとって、クラスメイトのいる中学校生活は憧れだった。すれていない人間性とセーラー服で思いがけず目立ってしまう。緊張しながらも自分をさらけ出していく姿が、過去の自分と重なり、応援したくなってしまう。
そんな小路の魅力を引き出しているのが、15名に及ぶクラスメイト。
1クール(全12~13話)であれば普通は一部の生徒しか登場させないものだが、本作は漏れなく全員に触れている。小路だけでなく、それぞれのキャラクターの魅力がしっかりと伝わる作りになっている。
クラスメイトたちの得手不得手を意図的に見せているので、性格に奥行きが感じられる。キャラが立っているからこそ、体育館や後夜祭のような大勢が集まるシーンでも個々の判別が可能。1クールの作品でこの感覚を味わえるのは極めて稀である。
最後に、物語の舞台に関する描写の細やかさである。
背景の美しさは本作のクオリティを高める大きな要素になっている。臨場感があることで、他愛ない場面であっても退屈にはならない。
11話では、小路の通った小学校が廃校になる事実を知らされる。このような話は、当の本人よりも部外者の方が強い衝撃を受ける。もちろん視聴者の心にも強く刺さる。小路の取り巻く環境や背景を知ることで、より深く感情移入ができる。すると、主人公のみならず、作品そのものに対して愛着がわいていく。この段階を踏んだ魅せ方も実に巧みである。
本作を観終えたとき、心地良い清々しさを覚えるだろう。それは、明日小路の魅力にやられた視聴者の望む結末が待っていたからだ。
感想
・こだわりの"しぐさ"の描写
木崎江利花の爪を切る仕草。古城智乃が本を読みながら髪をかき上げる仕草。そして、明日小路の弾けるような一挙手一投足。挙げればきりがないほど、ひとつの仕草に目を奪われる。
その意図的な強調こそが個性を作ると同時に生々しさを感じさせる。表情も同じで、とくに目の使い方は秀逸。キャラクターの内面や思考を目のアップで表現し、視聴者に内面を読み取らせるような場面が随所に見られる。
最も印象的だったのは、江利花が最初に登場する爪切りシーン。いきなり心を鷲掴みにされたのは言うまでもない。
・作中のアイドル福元幹の存在
小路の憧れのアイドルである福元幹。名前は何度も登場するが、作中での露出は極めて少ない。重要なのは小路の”好き”を知ること。他人の好きな芸能人を知らないことなど日常茶飯事。だからこそ、よく分からないことがリアルに感じられる。
実際のTVCMに福元幹のCMを流す演出には感心した。彼女こそまさにアイドル(偶像)の鑑。
・妹の花緒
花緒と絡むことで小路の姉としての姿が自然と入ってくる。学園と自宅の二つの顔を知ることで、小路の魅力が引き立っている。というわけで花緒には助演女優賞をあげたい。
評価
☆☆☆☆☆
作品のクオリティは非常に高い。テーマが一貫しており、ストレスなく一気に見られる。決して派手さはないが、それぞれのキャラクターが丁寧かつ瑞々しく描かれている。女子中学生の陽の部分にスポットを当てた、心が洗われるような作品。一見の価値あり。
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