劇場アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』【紹介・レビュー・感想・評価】(ネタバレ有り)
概要
2018年8月17日に公開されたアニメ映画。原作は2010年5月に刊行された森見登美彦の小説。
あらすじ
小学四年生のアオヤマは、研究が大好きな男の子。アオヤマは将来の計画を立てており、その未来には歯科医院に勤めるお姉さんの存在があった。
ある日、アオヤマの住む町にペンギンが現れた。ペンギンがどこから現れ、どこへ行くのか。アオヤマは研究心を刺激され、仲間のウチダと共に調査に乗り出す。さらにクラスメイトのハマモトから森の奥にある"海"の存在を知り、謎はさらに深まっていく。
そんなとき、お姉さんが投げたコーラの缶が目の前でペンギンになった。次々と起こる不可解な出来事に、アオヤマは答えを求めて頭を悩ませる。
どういう人向けか
・十代の少年少女
・ジュブナイル作品が好き
・子供の頃、綺麗なお姉さんに憧れを抱いたことがある
・イオンが好き
!! 以下ネタバレ有り
登場キャラクター
アオヤマ
研究大好き少年。極端に大人びた性格をしているため、冷静に見ると結構ヤバい。
お姉さん
歯科医で働くお姉さん。普通すぎるのに全然普通じゃない。
ハマモト
頭が良くてチェスが得意なアオヤマのクラスメイトの女子。性格はかなりきつい。
ウチダ
アオヤマと共に行動するクラスメイトのメガネ男子。内気だが、実は一番まとも。
スズキ
アオヤマのクラスメイトのガキ大将。このご時世では暴力シーンを描けないので、見せ場がなくて可哀想なキャラ。
レビュー
「"お姉さん"観察日記」
本作は小学生の頃に抱いた夢や憧れをテーマとして描いている。学校の授業中に窓の外を眺めながら空想に耽る。そんな、ひと時の妄想を具現化したようなお話。
普通だけど普通じゃない日常の描写が、アナザーワールドへの扉を開いてくれる。
主人公のアオヤマは頭が良く、小学生とは思えないほど利発な少年。かなり特異なキャラクターで何事にも動じない。
クラスメイトには、友達でごく平凡なタイプのウチダ。乱暴者で自分勝手なスズキ。賢いけれど我が儘な一面も見せるハマモト。アオヤマの大人びた性格とクラスメイトの持つ小学生らしい幼さが、うまくバランスを保っている。
キャラクター同士の関係は"恋慕"でつながっている。アオヤマはお姉さんを想い、ハマモトはアオヤマを想い、スズキはハマモトを想う。
小学4年生であれば、他人に対する様々な感情が芽生え始める時期。クラスメイトたちはせいぜい羞恥心を感じる程度だが、アオヤマはその感情に対して"おっぱい"という物理的な部分からアプローチする。異性を論理的に考える姿が、滑稽であると同時に個性が引き立っている。
次に、町中に現れるペンギンや"海"などの非現実的な事象について触れる。
登場するものはペンギンや海など、現実に存在するものがほとんど。明らかに異質な存在はジャバウォックぐらいだろう。
謎が身近なものだからこそ、子供にも理解しやすくなっている。
最後はお姉さんについて。
お姉さんはアオヤマにとって憧れであり、一番の研究対象。そして、視聴者が共感できるポイントでもある。大人の階段を急いで駆け上ろうとするアオヤマと、それを優しく見守ってくれるお姉さん。
少年にとって大人のお姉さんとは、ジャバウォックや"海"よりも探究心をくすぐられる存在である。これも身近な存在。
ラストでは、お姉さんと別れた数年後のアオヤマが描かれている。お姉さんのことを忘れるどころか、今もその思いを強く抱いている。
やがて成長したアオヤマは、自分の力で謎を解き明かし、お姉さんを探すのだろう。
お姉さんの研究。それは世の少年たちの永遠のテーマなのだ。
感想
・日常の描写
夏祭りや台風の描写を非常に丁寧に描いているのが印象的だった。
・ハマモトのエゴ
理知的なタイプの女子であるハマモト。納得できないことや気に入らないことに対して強く噛みつく二面性にリアリティを感じた。
・ペンギンの意味
タイトルにも入っているペンギン。単純に可愛いからなのか、マスコット的な意味合いだったのか、それとも何かの暗喩だったのか。結局、最後までよく分からなかった。
もしかしたら物語を考えているときに偶然Suicaを見たのかもしれない。
評価
☆☆☆★★
観る年代によって印象や評価が大きく分かれる作品。あとは幼少期に"お姉さん"への憧れを持っていたかどうか。個人的にはその憧れがなかったので、この評価に落ちつきました。
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