『MOTHER2 ギーグの逆襲』【感想・雑記】~ゲームノ読ミ物(3)~
「大人も子供も、おねーさんも。」
このキャッチコピーで有名なスーパーファミコン用カセット。1作目はファミコンで発売され、糸井重里氏のプロデュースで話題を呼んだ。続編にあたる本作も、引き続き同氏が手がけている。
前作の世界観こそ引き継いでいるが、直接的なつながりは少ない。独特のセンスは相変わらずで、テキストや演出に個性があふれている。
そんな『MOTHER2 ギーグの逆襲』について、思いの丈をユカイツーカイに語っていきたい。
システム関連
本作では、ありそうでなかったシステムが採用されている。RPGにおいて定番化した部分に手を入れており、挑戦的な仕上がりになった。
ヒント屋
RPGは目的を達成するために行動を起こす、いわゆる"おつかいイベント"の連続で成り立っている。続けてプレイしていれば問題ないが、数日後にプレイを再開したときなど、何をしていたのか忘れてしまうこともある。
そこで、本作にはヒント屋という身も蓋もない名前の施設が存在する。次に向かう場所や、やるべきことのヒントをくれるのだ。当時のRPGは、今どういう状態で、次に何をすべきかという情報は表示されない。厳密には、表示する余裕(容量)がないといった方が正確かもしれない。
あの頃は攻略法を知る術が限られている。もちろんインターネットなどはなく、一部の本屋に置かれた攻略本のみ。そのため、暗中模索しながら自らの手で謎を解き明かすしかなかった。それも面白さの一端ではあるが、人によってはストレスに感じる場合もある。その解決策をゲーム内に作ってしまうのは面白い発想だった。競馬の予想屋みたいな胡散臭さが、また味わい深い。
いきなり勝利
主人公たちよりも明らかに弱い敵とエンカウントしたら、いきなり勝利演出になる時短システム。これもヒント屋と同じく、RPGの面倒な作業を減らしてくれた。
これは非常に快適で、経験値もしっかり入るためレベル上げに大活躍する。主人公から逃げていく下位モンスターを次々と経験値に変えていく様は、レベル上げというより捕食に近い。サガシリーズの"モンスターの肉"ではないが、あれほどバラエティに富んだモンスターを血肉にしているのなら、様々な超能力(PSI)が使えても不思議じゃない。
ぬいぐるみ
持っているだけで身代わりになってくれる頼もしい存在。実際は攻撃を受けるたびに綿まみれになっているので、本当にドット絵でよかった。ぬいぐるみとは、いなすものではなく、癒すものだ。
仲間
ネス
本作の主人公。序盤は攻守に優れた万能キャラとして暴れまわる。しかし、仲間が増えるとただのヒーラーであることが判明。中盤以降はポーラやジェフといったガチアタッカーがオラオラするのを陰で支えることになる。回復特化の主人公なんてDALKじゃあるまいし。
ポーラ
本作のヒロイン。ダメージを与えつつ行動不能にできるPKフリーズが強み。ただし、PP回復アイテムがなくなると、途端に"いのるレディ"に変貌する。元気なうちは強気になり、PPが切れると、か弱くなるわかりやすいタイプ。
ジェフ
仲間になって間もない頃は冴えないボーイだが、ペンシルロケットを手にすると立ちどころに豹変する。ペンシルロケット20を購入したら最後、もう誰にも彼を止めることはできない。
最終兵器を平気で扱う男、それがジェフなのだ。
プー
終盤で仲間になる武道の達人(ラーメンマンではない)。その実態はネスの劣化コピーだった。
なにをやっても中途半端で、役立つのはテレポートぐらい。名前も現代では別の意味に取られるし、ふんだりけったり。
そのかわりエンディングの演出は妙に力が入っている。例えるなら、M-1で漫才はいまいちだったのに雑談の方でウケるタイプ。
魅力あふれるマザー2の世界
過去作のオマージュ
本作では、ところどころに前作のBGMが使われている。自宅で流れるポリアンナ(前作のフィールドBGM)のアレンジや、おにいさんのテーマなどの色褪せない名曲が流れる。ボス戦では、前作の通常戦闘がアレンジされており、静かなメロディラインがより緊張感を高めてくれる。個人的にはこのボス戦のBGMがお気に入り。
ムーンサイド
4番目の町フォーサイドの裏面であるムーンサイドがかなりヤバイ。フィールドもさることながら、全員がトリップしていてまともに会話が成立しない。「はい」と「いいえ」が逆になるなど、何もかもが普通じゃないデンジャーゾーン。姿が見えない謎の人物を連れていくなど、イベント内容もかなりキマっている。ある意味、MOTHER2を象徴するエリア。
ドコドコ砂漠の埋蔵金
当時放送されていたTV番組『ギミア・ぶれいく』の企画だった徳川埋蔵金のオマージュイベント。番組の方は作業工程をチラ見せして、ひたすら時間稼ぎをしていた印象しかない。どうせグダグダに終わるんだから、マニマニのあくまでも掘り出してネタにすればよかったのに。
登場キャラクターの個性
ブンブーン
10年後からやってきたカブトムシ風の生物。語尾に使う「じゃ!」のクセがすごい。戦闘では頼りになるが、ポーキーの母親の一撃で息を引き取るシーンは涙なしに見られない。まるで「さらば師匠!マスター・アジア、暁に死す」を思い起こさせる名シーンである(多少の誇張あり)。
てんさいしゃしんか
いきなり天からローリングして現れるシルクハットの謎の人物。いたるところに現れては映えスポットの写真を残してくれる。
この人物に関する言及は一切ないので、暇を持て余した神の遊びなのかもしれない。チェーンソーで切断できるか試してみたい。
どせいさん
本作をプレイしたことがない人でも知っている超有名キャラクター。独特の風貌とフォントは、一度見たら忘れられない。
見た目の印象とは異なり、知性が高い。"おやじむし"との関連性は不明。
ゲップー
おそらくプレイヤーにもっとも強烈なインパクトを与えた敵キャラクター。専用のSEまで用意されているところからも、気合の入れ具合が違う。あえて例えるなら、"きたねぇおおなめくじ“である。
はえみつを使わないと倒せない(厳密には倒せるがかなり難しい)仕様は、ひかりのたまで弱体化させる大魔王ゾーマと同じ。国民的RPGのラスボスと共通点だらけなので、最強の敵と呼んでも差し支えないだろう。名前はカタカナだし、伸び棒もあるから違いがわからない(錯乱)。
クラーケン
ボスBGMが変化するターニングポイントのボス。かなりの強敵で、クラーケンの行動次第ではあっさり全滅してしまう。ペンシルロケットというオーパーツを使わなければ、トラウマレベルのモンスター。
BGMの変化とその強さで、同じく印象に残っている人は多いかもしれない。ただ、終盤に雑魚として再登場させるのはちょっと違うと思う。
まとめ
感想をひと言でまとめると、「いろいろと"攻めすぎ"た作品」である。
私が本作をプレイしたのはおとなになってからだ。不気味なものや奇妙なものに耐性がない時代にプレイしていたら、純粋に楽しむことはできなかっただろう。それぐらい非常識な内容だった。
ただ、それまでのRPGから次の段階へ移行しようとする姿勢が感じられたことは間違いない。王道のヒロイックファンタジーとは一線を画す独自路線を貫いたこだわりは間違いなく大きな魅力。
『MOTHER2』は、バブル崩壊直後の空気を漂わせる"高級なアブナイ果実“のような作品。気になる方は、おにーさんでも是非プレイしてほしい。
PR
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません