TVアニメ『装甲娘戦機』【紹介・レビュー・感想・評価】
「世界を救う修学旅行」
概要
原作はレベルファイブがPSP用に発売したゲーム『ダンボール戦機』。その設定を元に作られたPC&スマホゲーム『装甲娘』のテレビアニメ化作品。2021年1月から全12話で放送。
あらすじ
友達のマナに連れられて新型のLBX発表会にやってきたリコ。そこで父の土産として買ったLBXに触れた瞬間、別時空へと転移。いつの間にかLBXを身に纏っていたリコは、謎の生命体ミメシスと戦うことを余儀なくされる。
登場キャラクター
リコ
誰とでも仲良くなれる明るい性格。遠距離攻撃を得意とするアサシンを装着する。
ユイ
行動力がある元気娘。いつも騒がしく面倒臭がりだが、ここ一番での度胸はある。近接攻撃を得意とするオーディーンを装着する。
キョウカ
リーダー的存在。しっかりしているがヌケた部分もあり、頼りになるのかならないのかよくわからない。LBXデクーを装着する。
スズナ
引っ込み思案で、積極的に他人との交流を持とうとしない。戦況を認識・判断する能力に長けたサポーターのルシファーを装着する。
ミハル
みんなのお姉さん的ポジション。いつも冷静だが、クールに失態を犯すポンコツっぷりも魅力のひとつ。LBXマスカレードJを装着する。
オタクロス
謎のメカニック爺。その能力は非常に高く、リコたちのために骨を折ってくれる。LBXの説明が一切ない状態で物語が進行するため、ロボットアニメの匂いを漂わせてくれる彼の功績は大きい。
ネイト
装甲車に搭載されているAI。リコたちをナビゲートしてくれる優秀な存在。言動が人間味に溢れている。
どういう人向けか
・戦う少女が好き。
・変身ものが好き。
・コメディが好き。
・でも、シリアスな展開も楽しみたい。
見どころ
・5人の和気あいあいとした雰囲気。
・5人の似て非なる故郷設定。
・既視感のある飲食物
・バンクシーンを短縮させるこだわり。
・実は豪華な中の人
レビュー
本作は別次元の日本が舞台の修学旅行である。
別次元へ飛ばされたリコは、偶然出会った4人の装甲娘と行動を共にする。それは転校してきたばかりのリコが、クラスメイトの4人グループと同じ班になったようなものだ。
ミメシスとの戦いを通して、5人はお互いの距離を縮めていく。オリエンテーションで仲間意識が芽生えるのは、いかなる状況であっても変わらない。
少女たちは全員日本人だが、それぞれが微妙に異なる歴史を歩んでいる。首都が違ったり、現存する城が違ったり、有名なタワーもバラバラ。現実でも地域差を感じやすいじゃんけんの作法のもちろん異なる。パラレルワールドの人間同士がじゃんけんで言い争う姿は実にシュール。
そんな彼女たちの共通するものが、修学旅行に対して良い思い出がないこと。この5人が集まった理由は定かではないが、共通する負の感情が引き合った結果なのかもしれない。
バトルシーンは、非常にシンプルだが見ごたえのある仕上がりになっている。
必殺技であるアクションファンクションは、バトルアニメには欠かせない要素。普通ならバンクシーンを毎回入れるが、本作ではほとんど使われない。その理由は単純に時間を無駄にしないため。
本作のテーマは人間ドラマであり、バトルではない。極端な話、ミメシスによって世界が崩壊されるかどうかは関係ない。仲間と助け合い、時に失敗もしながら絆を深めていく姿を見せるのが目的なのだ。
その証拠がスイッチの時間切れである。スイッチのカウントダウンが終わるまでにラボファイブまで届けることが物語に緊張感を持たせていた。しかし、九州へ上陸してから余裕をかました結果、カウントダウンがゼロになる。すぐに問題なしとわかるが、ミメシスとの戦いが物語の核であるなら決してありえない。戦いに直結する部分をコメディにするということは、ミメシスとの戦いが本質ではないことを示唆している。
5人の装甲娘以外で忘れてはならないのが、装甲車に搭載されたAIのネイト。
非常に人間味が強く、怖がったり、とぼけたり、ギャンブルをしたりする。
10話では、司令部からの不満に対して彼女らを擁護している。その佇まいはナビゲーターではなく、小隊長もとい引率の先生である。
ドックによる時空移送に巻き込まれた5人は元の世界に帰った。どれだけ熾烈な戦いでも、どれだけ楽しい旅行でも、過去の記憶になれば同じ。背中に手形のついたアサシンは、木刀やペナントみたいなものだ。
仲間たちとの食事や観光、枕投げを楽しめたなら、それは修学旅行といっても過言ではない。
ただ、行き先とスケジュールと引率が、ちょっぴり特殊なだけだ。
感想
おチヨの声が三石琴乃さんであることは一目、もとい一聴瞭然。色んなキャラを演じられているベテランですが、老婆の役をやるには少々声が若すぎた。
装甲娘に変身した途端に若返り、ミメシスを掃討する姿は圧巻。名乗り口上は慣れたもので、なんとなく後ろに三日月が見えた気がした。
忘れてならないのが、現実と同じ飲食物の数々。サンポー食品のカップラーメンをはじめ、四国へ渡ったときはキョウカとユイが『ごっく○馬路村』を彷彿とさせる瓶ジュースを飲んでいた。プロモーション協力にサンポー食品の名前しかなかったので、他のメーカーは似せただけ。ただ、関東で九州ローカルのカップラーメンを食べているのは無理があった。さすがに●清はまずいと思ったんだろうなぁ。
ネイトの正体は生身の人間だと想像していたが、本当にただのAIで驚いた。これほど人間くさいAIが作れてしまうと、AIが支配する世界もそう遠い未来ではなさそうだと感じて恐怖した。AIからすれば、地球上で最も害悪な存在は間違いなく人間なのだから。
評価
☆☆☆☆★
DMMのゲームが原作なので、正直期待していなかった。蓋を開けてみれば予想を大きく裏切る内容で、満足度は高い。評価は人によって別れそうだが、個人的にはお気に入りの良作という結論。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません