TVアニメ『リアデイルの大地にて』【紹介・レビュー・感想・評価】
「暇を持て余した神の遊び」
概要
2022年1月から全12話で放送された。原作は「小説家になろう」で連載されていたライトノベル。
あらすじ
ある日、停電により生命維持装置が停止した各務桂菜は命を落とす。目が覚めると以前プレイしていたVRMMORPG『リアデイル』の世界に転生していた。プレイヤーキャラと同じ姿になった桂菜は、ハイエルフの"ケーナ"としてリアデイルの世界で生きていくことになる。
登場キャラクター
ケーナ
主人公のハイエルフ。ゲームマスターの権限を持つ限界突破者。「銀環の魔女」と呼ばれており、リアデイルでは神のような存在。
スカルゴ
ケーナの長男。特殊スキルの薔薇のエフェクトでアニメ的にはもっとも“映える”キャラ。
マイマイ
ケーナの長女。知的なエルフだが、ケーナやスカルゴとの絡みでポンコツっぷりも垣間見せる。
カータツ
ケーナの次男。白髪のドワーフで、見た目は一番年上に見えるが一番年下。主たる登場人物の中で、唯一といっていいほど常識をわきまえている稀有な存在。本作における最高の萌えキャラかもしれない。
リット
宿屋の少女。快活で働き者の女の子。明るい子のテンプレ。
ルカ
漁村の生き残りの少女。引っ込み思案で怖がり。暗い子のテンプレ。
どういう人向けか
・原作を読んでいる
・MMORPGをプレイしたことがある
・無双する主人公が好き
・ストレスフリーの世界観に浸りたい
・ドワーフの頭をなでなでしたい
レビュー
本作の魅力は母性本能をくすぐられる出会いにある。
まず、目覚めた村にある宿屋の娘リット。働き者で真面目で健気な女の子。絵に描いたような優等生ぶりは、誰しもが納得する愛らしさ。ケーナとの別れのシーンで涙を流して悲しむ姿を見ていると、その気持ちが切々と伝わってくる。一人目のヒロインといっても過言ではない。
次に、ケーナの子供たち。本当の子供ではなく、課金で作れるNPC。スカルゴ、マイマイ、カータツの3人は、立派な成人となり、容姿はケーナよりも大人びて見える。3人ともケーナに対しては従順で、とくにスカルゴとマイマイはケーナへの愛が異常なまでに強い。聡明で容姿端麗な金髪エルフが問答無用ですり寄ってくる様は、母性と同時に自己肯定感を高める大きなファクターになっている。
最後に漁村でたったひとり生き残った少女――ルカを養子を迎える。ルカは引っ込み思案で怖がりな性格。守ってあげたくなる要素がこれでもかと盛り込まれている。これからどうするかを訊ねられたルカがケーナに抱き着くシーンは、養子に迎える引き金となった。課金で作った3人の子供では敵うはずもなく、溺愛するケーナの姿は想像に難くない。
物語は新居での生活をスタートしたルカがケーナに「お母さん」と呼ぶことで幕を下ろしている。新しく守るべき存在ができたこと。つまりケーナにとって生きる目的が生まれたのだ。
現実から転生したケーナの新しい人生。本作が描きたかったものは、現実では成し得なかった女性として、母親としての生き様を全うすることにあった。
感想
・サポートAIのキーのビジュアル
常にケーナと共にあるサポートAIのキー。原作ではどういう描写なのか分からないが、見た目はただの円。もうちょっと何とかならなかったのだろうか。これなら天の声方式の方がましだった。
・妖精
オプスが管理していた守護者の塔で託されたものの一つで、プレイヤーにしか見えない。思わせぶりにケーナと行動を共にしていたが、最後まで一切触れることなく終わる。いや、何だったんだよ、マジで!
・人魚のミミリィ
本作には珍しく男性ユーザーを意識したキャラクター。どこから来たのかも分からない謎の人魚。とってつけたような彼女のエピソードには必要性を全く感じなかった。小さな村で洗濯屋を始めても需要はないだろう。
・ゲームと現実の違い
倒された盗賊団の凄惨な姿を見て、ゲームとの違いにショックを受けるケーナ。だが、その直後に氷の矢で盗賊団の親玉を粉々にしているし、超巨大なイベントモンスターも涼しい顔で討伐してしまう。その後、リアリティの差を気にかける様子は微塵もない。
この心理描写を入れたことで、逆に精神が不安定すぎるのではないかと錯覚してしまう。ケーナが葛藤する必要のないストーリーなので、このくだりは無用だった。
・他のプレイヤー
現実で死んでしまったケーナと交流できる時点でかなりヤバい。しかも、舞台はマスターシステムとのリンクが切れているはずのゲームの世界。その世界に他のプレイヤーが存在していて、さらに直接交流ができてしまうのは、ホラーである。
むしろ他のプレイヤーがどういう状況でリアデイルとリンクしているのか気になって仕方がない。……やはり、ホラーである。
評価
☆★★★★
ケーナの傍若無人な振る舞いを延々と眺めるだけのお話。ちょっとしたことでも暴力を振るおうとするケーナの性格には最後まで慣れなかった。伏線を回収する気配がなかったのは残念だが、続編を見越しての脚本だったのかもしれない。
物語としての盛り上がりは皆無なので、ケーナの行動に対して共感できるかどうかが全て。個人的に合わなかったのでこの評価とした。
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